- SABICのEXTEM™ RH樹脂は、マイクロレンズアレイの量産化をコスト効率良くすることで、新たな光学技術の発展を支援。
- SABICのEXTEM RH樹脂は、幅広い温度範囲にわたって複雑な形状の寸法公差と光学公差を維持し、従来材料であるガラス、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂の欠点を克服。
2024年4月3日、日本・東京 – 化学業界のグローバル・リーダーであるSABICは、2024年3月26日から28日にかけて米カリフォルニア州サンディエゴで開催された光通信の展示会2024 Optical Fiber Communication (OFC) Conference and Exhibitionに出展し、商用オンボード・オプティクスおよびコ・パッケージド・オプティクス技術を用いたマイクロレンズ・アレイ(MLA)の生産および組み立て用途に向けて、2023年度エジソン賞を受賞したEXTEM™ RHシリーズ樹脂を展示紹介したことを明らかにした。さらに、SABICブース(#1204)では、アイルランドのTyndall国立研究所およびオランダのChip Integration Technology Center(CITC)社が製造した2台のデモ機が展示されたほか、光通信の課題解決に向けたデモを実施した。
SABICのスペシャリティー事業部で技術担当ゼネラル・マネージャーを務めるScott Fisherは、「近年、データ通信量はAI、IoTや5G技術の進展を受けて指数関数的に増加しており、データセンターの帯域幅容量やエネルギー効率を向上させるため、オプト・エレクトロニクスの導入が不可欠となっています。ですが、コ・パッケージド・オプティクスなどの最新技術を用いた光学部品は、大規模な製造と組み立てが難しく、設計が複雑なうえ、高コストになる可能性があります。こうした課題に対処するため、私たちはレンズアレイ部品の製造に適したEXTEM RH樹脂を開発しました。EXTEM RH樹脂は、従来材料で懸念されてきた拡張性や製造上の課題に対応し、光学部品の設計や性能および生産に新たな機会を開きます」と話している。
低損失の拡大ビーム結合をサポート
シリコンや他の基板を用いたフォトニック集積回路(PIC)が開発されたことで、データ伝送の高速化を図りながらコンパクトな製品設計が可能となっている。だが一方で、光導波路において光モード・フィールドとシングルモード光ファイバーとの間のサイズ差が課題の1つとなっている。
OFC 2024展においてSABICは、この課題に対する有望なアプローチとして、接続に拡大ビーム光インターフェースを活用したデモを実施した。このデモでは、ビーム拡大光学素子(この場合は自由曲面レンズアレイ)を光コネクターインターフェースの両側に設置し、ファイバーアレイをより大きな自由空間ビームに結合する。拡大ビーム結合を用いることで、横方向のアライメント公差が緩和されるとともに、塵埃などの汚染物による伝送路の遮蔽を抑えることができる。
このモデルのアレイは、280°Cのガラス転移温度を持つEXTEM RH樹脂を用いてマイクロ成形されたものであり、EXTEM RH樹脂はさまざまな自由曲面を持つ光学レンズを射出成形によって製造することができる。
このデモに用いられたコネクターアセンブリはTyndall国立研究所によって製造され、光ファイバー接続技術に使用される光学部品の集積化向上において、SABICの材料ソリューションがどのように貢献するかを示している。このアセンブリを用いたデモは、光学的に透明で、かつJEDECリフローや表面実装技術(SMT)などの極端な温度環境に耐えられるEXTEM樹脂を使用することで、どのように光集積が実現されるかを理解する上で役立つものである。
製造効率の向上
こうした新しい光学技術の導入を加速させるには、部品単価が比較的低いマイクロオプティクス(微小光学素子)を大量かつ合理的に製造することが必要だが、これは溶融石英やガラスでは達成が難しい目標である。これらの従来材料とは対照的に、EXTEM RH樹脂はマイクロオプティクスの加工や組み立ての規模とコスト効率を向上させるいくつかの方法を提供する。
第1に、EXTEM RH樹脂を用いたマイクロ成形は、高い信号整合性と低い光損失でミリメートルサイズの部品を数百万個の規模で供給することができる。これは、データサーバーのバックプレーン、通信スイッチ、スーパーコンピューターやファブリック接続されたネットワークなどにおいて、最先端の光パッケージングやカップリング技術の迅速な導入促進に寄与する。
さらに、EXTEM RH樹脂を用いて成形されたマイクロオプティクスは、リフロー工程の前段階で光学的に透明な接着剤を使用することで、光ファイバーとPICの位置合わせが可能となり、パッケージング工程を簡素化することができる。
OFC 202展で実施された別のデモでは、基板とMLAの位置合わせに接着剤としてナノ銀焼結ペーストを用いる、CITC社との共同開発によるプロセスが紹介された。このプロセスは、これまで標準的に使用されてきたエポキシ系接着剤を代替するものであり、同接着剤で指摘されてきた長期的安定性の不足やCTEミスマッチなどの欠点を解消するほか、硬化のためにUV透過性のレンズ材料を利用する必要がなくなる。
さらにSABICは、標準的なMTフェルール・コネクターにおける、VCSEL/PDとPICとの間で光カップリングの90度曲げを可能にし、全反射を利用した複雑形状のレンズアレイに関するデモンストレーションも行った。
従来材料を凌駕
高耐熱性EXTEM RH樹脂は、2023年エジソン賞のNext Generation Manufacturing部門で金メダルを獲得している。この先進的な熱可塑性樹脂は、これまでMLAの成形に用いられてきた従来材料の欠点を克服するソリューションである。EXTEM RH樹脂は、ガラスや熱硬化性樹脂と異なり、複雑なレンズ形状を設計する自由度を拡大する。マイクロ成形は、研削や研磨などの二次加工が不要で、迅速な大量生産が可能となるため低コスト化に寄与する。
SABICは、顧客がこれら材料の潜在能力を引き出せるよう、オランダのOptical Center of Excellenceを活用して、熱可塑性樹脂の加工、部品設計や光学性能測定に関する最先端のサポートを提供している。また、光相互接続やレンズで使用できるEXTEM樹脂を特集したカタログ、EXTEM樹脂がコ・パッケージド・光コネクターにもたらす潜在的な利点を説明するビデオも作成している。さらにOFC展では、コネクター、配線やケーブル用途、プラガブル・オプティクス、オンボードとコ・パッケージド技術の両方に対する材料ソリューションも展示した。
OFC 2024展は、3月26~28日にかけて米カリフォルニア州サンディエゴのサンディエゴ・コンベンション・センターで開催された。