日本・東京、2022年4月21日 – 化学業界のグローバルリーダーであるSABICは、本日、5G基地局のダイポールアンテナや電気電子用途に適した「LNP™ THERMOCOMP™ OFC08Vコンパウンド」を発表した。この新しいコンパウンドは、軽量でコスト効率の良いオールプラスチック製アンテナの設計開発に寄与し、5Gインフラの配備促進への貢献が期待されている。都市化やスマートシティ化の進展に伴い、高速で信頼性の高いネット接続を何百万人もの住民に提供するには、早急な5Gネットワークの普及が求められている。
SABICのスペシャリティ事業部でビジネスマネジメントLNP & NORYL担当ディレクターを務めるJoshua Chiawは、「高速・大容量、多数端末との接続、低遅延という5Gの特徴を実現するため、RFアンテナメーカーは設計、材料および製造工程を大きく変革させています。私たちは、アクティブアンテナユニットに数百個単位で使用されるRFアンテナの生産簡素化に寄与します。SABICの新しい高性能LNP THERMOCOMPコンパウンドは、後工程を省くことで製造の効率化に貢献するとともに、複数の卓越した性能を提供します。SABICは、5Gインフラに向けた新材料を継続的に開発することで、この次世代ネットワーク技術の普及を後押ししてまいります。」と話している。
LNP THERMOCOMP OFC08Vコンパウンドは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂をベースとするガラス繊維強化材料である。LNP THERMOCOMP OFC08Vは、LDS(レーザーによる直接立体回路形成技術)による卓越しためっき加工性、強固な層間密着性、低ソリ性、高耐熱性、ならびに安定した誘電およびRF(無線周波数)性能を特徴としている。こうした特性を兼ね備えることで、射出成形が可能な新しいダイポールアンテナ設計が可能となり、従来のプリント基板(PCB)製造工程やプラスチックの部分電気めっきに対する優位性がもたらされる。
全体的な性能の向上
このLNP THERMOCOMP OFC08Vは、LDS技術を用いた金属めっき加工に対応できるよう開発された新しいコンパウンド製品である。この材料は、さまざまなレーザー加工法に対応するほか、容易なめっき加工とめっき線幅の均一性を両立しており、安定したアンテナ性能の確保に寄与する。また、プラスチック層と金属層とが強固に密着することで、熱老化や鉛フリーリフローにおいても剥離が発生しない。従来のガラス繊維強化PPSと比べて、高い寸法安定性と低ソリ性を発揮することから、LDS加工時における金属めっきの円滑な定着と正確な組み立てを実現することができる。
これらの特性によってLNP THERMOCOMP OFC08Vコンパウンドは、ドイツのレーザー製造ソリューションプロバイダーであるLPKF Laser & Electronics社によって、同社システムに適合するLDS用熱可塑性樹脂として承認されている。
SABICのアジア太平洋地域におけるフォーミュレーション&アプリケーション開発担当ディレクターであるJenny Wangは、「ガラス繊維強化PPSを用いたオールプラスチック製ダイポールアンテナは、軽量化、PCB製造工程の簡素化や高いめっき均一性を実現できることから採用が進んでいます。しかしながら従来のPPS材料は、複雑な金属めっき工程が必要でした。この課題に対処するため、SABICはLDSに対応するとともに強固な密着性を発揮する、PPSベースの新しい特殊コンパウンドを開発しました。」とコメントしている。
LDSに対応したLNP THERMOCOMP OFC08Vコンパウンドは、現在広く使用されている複雑なプラスチックの部分電気めっきに比べ、よりシンプルで高い生産性を実現する。LDSを用いた工程では、部品を射出成形した後に必要となるのは、レーザーによる立体形成と化学めっきだけである。また、新しいLNP THERMOCOMP OFC08Vコンパウンドは、表面実装技術を用いたPCB製造工程に求められる高耐熱性や難燃性(0.8 mm厚でUL-94 V0)など、ガラス繊維強化PPSのあらゆる性能メリットを提供する。さらに、本コンパウンドが有する低誘電率(誘電率:4.0、誘電正接:0.0045)、安定した誘電性能、過酷条件下での優れたRF性能は、伝送性能の最適化および長寿命化を実現する。
「この先進のLNP THERMOCOMP OFC08Vコンパウンドによって、アンテナ設計の改善、現場での安定した性能、金属めっき工程の簡素化、システムコストの低減が可能となります。」とWangは付言している。