2023年7月13日、日本・東京 – 化学業界のグローバルリーダーであるSABICは、シート押出成形および熱成形に適した難燃性材料「SABIC® PP compound H1090樹脂」および「STAMAX™ 30YH611樹脂」の2製品を発表した。これらの製品は、大型で形状の複雑な構造部品の成形に対して、従来のシートメタル成形、圧縮成形や射出成形を置き換える新たな選択肢となる。
これらの新製品は、ポリプロピレン(PP)をベースに30%ガラス繊維で強化された難燃(FR)材料であり、電気自動車(EV)のバッテリーパックを構成する上部カバー、筐体、モジュールセパレータなどの部品に適している。両製品ともに優れた遮熱性を備えているため、熱暴走の遅延や抑制に貢献できる。さらに、これらの材料は押出成形および熱成形が可能であり、打ち抜き加工されたシートメタル材料と比べ、設計、システムコスト、断熱性、電気絶縁性、および重量の面で優れている。また、押出成形および熱成形は、高価な金型や設備を必要とする熱可塑性樹脂の射出成形や熱硬化性樹脂の圧縮成形と比べ、いくつかのケースで費用対効果や効率に優れている。
SABICによるこれら新材料の開発と検証は、信頼性、安全性、効率性に優れたEVを開発するという自動車業界の使命を支援する「BLUEHERO™」の取り組みの一環であり、これはバッテリー構造部品の最適化を支援する事に重点を置いている。BLUEHEROでは、とりわけ大型部品の成形、圧縮成形、熱成形、および最先端の射出成形に関するSABICの知識と専門技術が活かされている。
SABICでETP&マーケットソリューション部門のゼネラルマネージャーを務めるAbdullah Al-Otaibiは、「SABICは、従来の材料やプロセスに代わる新たな選択肢の提供を通じて、お客様による次世代バッテリー部品の設計・製造を可能にするとともに、コスト削減や競争優位性の獲得に貢献します。SABICのエンジニアは、大型で形状の複雑な構造部品の押出成形や熱成形にガラス繊維強化材料を適応させるパイオニアです。これらの新たな樹脂材料の開発と検証は、自動車の電動化に向けたポリマー技術におけるSABICのリーダーシップを示すものです」と話している。
SABICは、SABIC PPコンパウンドH1090樹脂とSTAMAX 30YH611樹脂について、複雑な形状を持つEVバッテリー用途での機械的性能と火災安全性能、製造可能性を、自社の研究所と顧客との両方で検証している。これらの材料は、最終用途において板金や熱硬化性樹脂に代わる新たな選択肢となるだけでなく、射出成形金型への投資の実効性を判断するための試作品製作にも利用できる。
特徴的な特性の組み合わせ
短繊維強化SABIC PPコンパウンドH1090樹脂と長繊維強化STAMAX 30YH611樹脂は、火災安全性のための難燃性、バランスのとれた剛性と延性の組み合わせが特徴である。1200℃の炎に10分間、垂直・水平に曝すと、優れた難燃性を示す。効率的な炭化と難燃性により、部品裏面の温度を210℃以下に保ち、溶け落ち(バーンスルー)を防止する。1.5mmでUL94 V0規格に適合する非臭素系・非塩素系FRによって、難燃性はさらに向上する。こちら(here)から、STAMAX樹脂を用いた熱暴走試験の様子を視聴できる。
SABIC PP compound H1090樹脂とSTAMAX 30YH611樹脂の主な特性として、広い温度範囲にわたる優れた剛性、強度、耐衝撃性に加えて、寸法安定性、低熱膨張係数(CTE)、優れた耐クリープ性なども挙げられる。両製品の母材であるPPは、優れた電気絶縁性や低密度に加え、世界中で入手が可能であり、優れた加工性を備えている。
これらの製品に加え、SABICではEVバッテリーパックの内部部品や筐体に最適な射出成形および圧縮成形用のガラス長繊維および短繊維で強化された難燃性PP材料も提供している。