2019年1月17日 – SABICは、2014年に設立されたナノテクノロジー企業Black Diamond Structures(BDS)について、同社株式の過半数を取得したことを明らかにした。BDSは独自の改質技術を用いたカーボンナノチューブMOLECULAR REBAR®を製造・販売しており、同製品は鉛電池およびリチウムイオン電池を使用したエナジーストレージ用途の性能向上に大きな可能性を提供するものである。
今後BDSは、SABICのスペシャリティ事業の傘下に加わることになる。SABICでスペシャリティ事業の副社長を務めるAlan Leung(アラン・リヨン)は、「私たちスペシャリティ事業は、BDSのカーボンナノチューブ技術を活かし、エナジーストレージ市場で要求される厳しい課題の数々に取り組んでまいります。特にBDSは、充電率、バッテリーサイクル寿命、エネルギー密度を大幅に改善可能なソリューションを求める電池メーカーに画期的なメリットを提供します。」と話している。
従来のカーボンナノチューブは絡み合い、塊となって不純物が残留する傾向にあることが知られている。このため実際の用途においては、電気的および機械的な材料特性に制約が生じることになる。一方でBDSが供給するMOLECULAR REBAR®は、クリーンで絡み合うことなく分散しアスペクト比が均一なため、高性能なエナジーストレージ用途の製造に適したカーボンナノチューブ製品である。
BDSのCEOであるJohn Hacskaylo(ジョン・ハックスカイロ)は、「この独自のナノ材料は、新たな投資を必要とせず既存のバッテリー製造プロセスに直接組み込むことができるため、電池メーカーは次世代バッテリーの迅速な開発が可能となります。試験の結果では、MOLECULAR REBAR®タイプのカーボンナノチューブは鉛電池のサイクル寿命を大幅に改善し、またリチウムイオン電池の性能向上によって電力容量の増加に対する業界ニーズに応えうることが示されています。」とコメントしている。
加えてHacskayloは、MOLECULAR REBAR®が新たな電池設計における小型・軽量化に効果的な役割を果たすことを期待している。これは、ハイブリッドおよび電気自動車市場における軽量バッテリーの世界的な需要増加に対応するだけでなく、バッテリー製造コストの低減や生産量の増加、より高い経済性の達成に貢献するものである。
またLeungは、SABICのスペシャリティ事業のポートフォリオにMOLECULAR REBAR®技術が加わることで、エナジーストレージ市場に留まらない新たな機会の開拓、特殊樹脂や機能性コンパウンドの特性向上に向けた材料科学におけるイノベーションの実現にも期待している。
BLACK DIAMOND STRUCTURESについて
Black Diamond Structures(BDS)はSABIC Ventures US LLCとMolecular Rebar Designの合弁会社として2014年に設立された、エネルギー貯蔵市場に向けたナノ材料ベースソリューションのグローバルリーダーです。同社は、エネルギー貯蔵市場におけるMOLECULAR REBAR®の独占使用権を保有しています。MOLECULAR REBAR®は、鉛電池およびリチウムイオン電池の機械的および電気化学的特性を改善する革新的なディスクリート(分散型)カーボンナノチューブ技術です。
BDSは、米テキサス州オースティンに本社、量産工場およびワールドクラスのバッテリ試験能力を有しており、世界の160社以上におよぶバッテリメーカーと協力しています。
詳細については、ウェブサイトをご参照ください。www.blackdiamond-structures.com。