2011年9月9日 – VICTREX® PEEK™樹脂およびVICOTE®コーティング(ヴァイコート)、APTIV®フィルム(アプティブ)をはじめとした高機能性材料を販売するビクトレックスジャパン株式会社(社長:アンドリュー・ストーム、本社:東京都港区)は、樹脂フィルムの精密加工を手掛ける林フェルト株式会社(代表取締役社長:守屋博正、本社:東京都台東区)が、APTIVフィルムを用いて、水漏れやガス漏れの無い強固な密着性を持つ超音波溶着技術を確立したことを明らかにした。これにより、今まで糊代を取って接着剤によって接合していた袋形状の製品なども、接着剤を使用せずに製造が可能となる。
溶着加工は熱可塑性樹脂部材を加熱溶融させ分子レベルで結合させる接合技術であり、超音波溶着は対象素材に超音波振動を伝えることで樹脂界面に摩擦熱を発生させ溶着するものである。接合に接着剤を使用しないことによる材料コストの低減や工程の簡素化が図れる上、耐薬品性や溶出物の観点から接着剤の使用を避けたい用途に最適な接合技術である。VICTREX PEEK樹脂を原材料とするAPTIVフィルムは熱可塑性材料ではあるが、融点が343°Cと超高温であることから、これまで溶着技術が適用されておらず、また溶着によって強固な密着性を得るための条件出しが難しいためPEEKフィルムの溶着加工は不可能視されてきた。
林フェルト社で取締役 営業本部長を務める荒木俊一 氏は「当社は超音波溶着機メーカーとPEEKフィルムの溶着に最適な性能を持つ装置を選定すると共に、溶着加工時の設定条件を検討しました。また超音波を溶着対象物に伝達するホーンの形状を工夫することでAPTIVフィルムの溶着が可能となりました。このたび確立した溶着技術では、結晶および非晶フィルムを含めた全てのAPTIV製品の溶着が可能です。」と話している。
従来、溶着加工が可能な樹脂フィルムとしてはPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂が広く利用されており、耐熱性や耐薬品が求められる用途においては代替材料としてPVF(ポリフッ化ビニル樹脂)フィルムが使用されていた。しかしながらPVFフィルムは供給がひっ迫しており、入手が困難となっていることから、高耐熱、高耐薬品性を持ち超音波溶着が可能な代替フィルムが求められていた。
APTIVフィルムは、原材料であるVICTREX PEEKの優れた特性を有しており、PETフィルムよりも優れた耐熱性および耐薬品性を発揮する高機能熱可塑性フィルムである。
今後ビクトレックス社では、現在PVFフィルムが使用されているガス分析バッグやコンポジット成形時の養生シートといった既存用途での代替利用を提案していく。加えてPETフィルムが利用できない高温環境および各種溶剤や洗浄剤、さらには毒性ガスやオイル存在下における電子部品など内容物の保護用途といった過酷な環境で使用される製品での需要を見込んでいる。
林フェルト社について:
林フェルトは、プラスチックフィルムをはじめとしてウレタンフォーム、フェルト、両面テープなどの多彩な素材を精密加工し、事務機器や電子機器、カメラなどの機能部品を製造している。同社の製品は、一般機器、OA機器、AV機器、携帯電話などの重要なシステム部分に活用され、様々な技術革新の一翼を担っている。http://www.hfelt.co.jp