PEEK™樹脂フィルムのAPTIV®を用い、厚み300μm以下で高精度な薄肉成形部品の製造技術を確立

射出成形よりも薄く、真空成形よりも精密な成形品

APTIV®フィルムを用いた永井製作所の薄肉成形品サンプル

APTIV®フィルムを用いた永井製作所の薄肉成形品サンプル

2011年8月11日 – VICTREX® PEEK™樹脂およびVICOTE®コーティング(ヴァイコート)、APTIV®フィルム(アプティブ)をはじめとした高機能性材料を販売するビクトレックスジャパン株式会社(社長:アンドリュー・ストーム、本社:東京都港区)は、樹脂フィルムの精密成形を手掛ける有限会社永井製作所(代表取締役社長:永井健一、本社:埼玉県入間市)が、熱可塑性PEEK樹脂フィルムのAPTIVを利用し、射出成形よりも薄く真空成形よりも精密な薄肉成形品の製造技術を確立したことを明らかにした。

APTIVフィルムは、原材料であるVICTREX PEEK樹脂が持つ高耐熱性、耐薬品性、機械的特性、摺動性や電気絶縁性といった複数の優れた物性を兼ね備えており、過酷な使用条件が求められる用途に適している。今後ビクトレックス社では、はんだリフロー・プロセスを伴う電子部品や医療機器など高耐熱性や摺動性が求められる薄肉成形部品向けに用途開拓を進める方針である。

このたび永井製作所が確立した製造技術は、上下2つの金型を用いてシート状の熱可塑性樹脂フィルムを加熱プレスする「マッチフォーミング法」と呼ばれる成形方法である。この成形方法は金型形状の再現性が非常に高く、複雑で微細な面形状を持つ精密部品の成形加工が可能である。

これまで樹脂フィルムを立体形状に成形する方法としては、加熱軟化させた樹脂フィルムに金型を当て、フィルムと金型の間の空気を吸引して真空状態にすることでフィルムを金型に密着させて成形する真空成形が多用されてきた。真空成形は片面にしか金型を用いないため安価に成形が可能な反面、複雑形状の成形品についてはエッジ部分に角が立たず仕上がりが丸くなるなど細部の形状に精度が出ない上、均等な厚みを再現しにくいという難点があった。一方マッチフォーミングは上下両面に金型を利用するため、成形品全体が均一に伸びて部分的に薄くならず、成形後の厚み精度が高いという特長を持つ。このため垂直な立ち上がり形状を持つ「深絞り成形品」の製造が可能となる。150mm x 150mmサイズの成形品が製造可能で、成形後の穴開け加工も容易である上、10μmオーダーの精度要求に対応できるなど、厚み12μm~300μm程度の薄肉成形用途に最適な技術である。

永井製作所の取締役営業部長である永井裕二は「PETやPEIなどの一般的に利用されている樹脂フィルムと異なり、高耐熱なAPTIVフィルムは超高温で成形する必要があります。このため当社ではAPTIVフィルムが成形できるプレス機を自社開発し、加熱温度やプレス時間の管理といった成形条件を制御することで、APTIVフィルムの成形を可能にしました。」としており、加えて「当社のマッチフォーミング法は、成形素材である樹脂フィルムの選択肢が汎用樹脂からスーパーエンプラまでと幅広く、耐熱性、耐薬品性、摺動性、電気絶縁性といった成形品に要求される機能に最適な素材選択が可能です。また月産500万枚の量産にも対応可能で、射出成形に比べ金型などの初期費用が抑えられるというメリットもあります。」と話している。

ビクトレックスジャパン社でAPTIVフィルムマネージャーを務める大沼敏夫は「APTIVフィルムの原材料であるVICTREX PEEKは、FDA認可、ハロゲン系難燃剤を用いることなくUL94 V-0難燃性を発揮すると共に、リサイクルが可能でRoHS指令に準拠する熱可塑性素材です。また航空宇宙、自動車、燃焼、発煙、毒性、食品/飲料水や軍事に関連する多くの規格および基準にも適合しています。今回、射出成形よりも薄肉な成形品を容易に製造する技術が確立されたことで、さらなる用途範囲の拡大を期待しています。」とコメントしている。


永井製作所について:
1971年に創業された永井製作所は、熱可塑性フィルムを素材とした精密成形加工に特化し、技術革新を進めている。同社は多岐にわたる素材や形状の成形加工を通じて豊富なノウハウを蓄積しており、成形品の用途はスピーカから電子部品、医療機器部品、絶縁部品などに広がっている。
http://www.nagai-mfg.co.jp