VICTREX® PEEK™樹脂を用いた 熱可塑性コンポジット・ファブリックが プレス成形時のサイクルタイムを短縮

VICTREXR PEEK?樹脂を用いたスイスTissa社の熱可塑性コンポジット・ファブリック2011年4月22日 – VICTREX® PEEK™樹脂およびVICOTE®コーティング(ヴァイコート)、APTIV®フィルム(アプティブ)をはじめとした高機能性材料を販売するビクトレックスジャパン株式会社(社長:アンドリュー・ストーム、本社:東京都港区)は、連続ガラス繊維ファブリック(織布)を手掛けるスイスのTissa Glasweberei AG(ティッサ)社が、一方向に配列した炭素、ガラス繊維にVICTREX PEEK樹脂を含浸させてテープ形状に加工した熱可塑性UDテープ(一方向テープ:Uni-Directional tape)を用い、熱可塑性コンポジット・ファブリックを開発したことを明らかにした。

パウダーおよびペレット形状で利用可能なVICTREX PEEK樹脂は、炭素、ガラスやアラミドなどの連続繊維を利用した高性能な熱可塑性プリプレグの製造時にマトリクス材料(織物に含浸させる樹脂材料)として採用が広がっている。このたびティッサ社が開発したコンポジット・ファブリックは、S-2 Glass*(米国AGY社製ガラス繊維)や炭素繊維にVICTREX PEEKを含浸して作られたUDテープを用いており、ユーザーはファブリックを部品にプレス成形する際のサイクルタイムを大幅に短縮することができる。

一般的にコンポジット・ファブリックは、ガラス繊維や炭素繊維で織られた原布に樹脂材料をコーティングして製造されるが、こうして作られたファブリックは原布内部に樹脂が完全に含浸しないため、プレス成形時に内部へ十分に含浸させる必要があった。しかしながらティッサ社のファブリックは、あらかじめ完全に樹脂が含浸したUDテープを用いてファブリックが織られているため、熱によって各層を接合するだけで製造でき、プレス成形時のサイクルタイムとコストを大幅に低減できる。

ティッサ社のCEOであるエドウィン・シュネーベルガーは「当社は、VICTREX PEEKとS-2 Glassおよび炭素繊維によるUDテープを用いたファブリックを試験した顧客から非常に良い評価を頂いており、このコンポジット・ファブリックの卓越した品質と性能が確認されました。」話している。

ティッサ社の熱可塑性コンポジット・ファブリックは繊維充填量が最大65%と非常に高いため、卓越した機械特性、熱硬化性樹脂を用いたファブリックに比べて高い損傷許容性、高い疲労強度や剛性、繊維と樹脂との優れた密着性といった数多くの利点を有し、製品の長寿命化や軽量化に貢献する。こうした特長にはVICTREX PEEKが有する最高260°Cの使用温度、化学薬品や溶剤に対する耐薬品性、耐摩耗性といった様々な優れた特性が活かされており、またこれによって動的および静的な荷重条件下においても高い機械特性を発揮することができる。

通常、熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂としたプリプレグは冷凍庫で保存されるが、ティッサ社のファブリックはVICTREX PEEKが熱可塑性樹脂であることから室温での保管が可能で、冷凍設備などの高価な冷却システム用に追加の保管コストを必要としない。加えてティッサ社のファブリックは、溶剤を使用しておらずリサイクルが可能なVICTREX PEEKを用いているため環境に優しい製品である。

ティッサ社が開発した技術は様々な種類の繊維と樹脂の組み合わせに適用することができ、航空宇宙、一般産業や医療といった最終用途における平板構造材やパネルなどの単純形状の部品製造に適している。ファブリックを加熱し2~3分間プレス成形することで、2mm厚みのパネルが容易に製造可能であり、また完全に含浸したテープで作られたコンポジット・ファブリックは簡単かつ安全に扱えるため、オートクレーブ装置を利用しない自動化工程に最適である。このVICTREX PEEKを利用したコンポジット・ファブリックは既にテスト・サンプルが利用可能であり、現在ティッサ社では様々なアプリケーションにおける金属および熱硬化性樹脂の代替利用に向けOEM、設計者および部品メーカーと共同で開発を進めている。

*S-2 Glassは米AGY社の登録商標である。


TISSA AG社について:
1963年に設立されたTissa Glasweberei AG社は、ガラス繊維を用いたファブリック製品のリーディング・カンパニーであり、チューリッヒ、ルーサーン、バーゼルの中央地点という世界的な製品供給において理想的な場所に拠点を有している。同社では35年間の経験と生産技術を駆使することで、アラミド繊維や炭素繊維といった高性能材料を用いたアプリケーションの開発も増加している。ティッサ社は製品の70%を輸出していることからも、世界規模での品質向上、柔軟な生産体制、顧客サポートの拡充に尽力している。ティッサ社はガラス繊維に関する長年にわたる実績と深い知識を活かし、産業用途に向けた次世代ファブリックの開発と製造に継続的に取り組んでいる。