製造方法に独自のインサート成形技術を用い、50~100%の長寿命化と歩留まり向上による低コスト化を実現
2010年11月30日 – VICTREX® PEEK™樹脂およびVICOTE®(ヴァイコート)コーティング、APTIV®(アプティブ)フィルムをはじめとする高機能性材料を製造・販売する英国ビクトレックス社(社長:デビット・ハメル、本社:英国ランカシャー州)は、半導体およびLCD製造装置部品を手掛ける韓国の大手メーカー・Willbe S&T(ウィルビー)社が、同社製CMPリテーナーリングの成形素材にVICTREX PEEKを採用したことを明らかにした。Willbe S&T社が独自に設計したインサート成形によるCMPリングは、従来のSUS(ステンレス・スチール)とPPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂との貼り合わせによるCMPリングに比べ高性能であり、歩留まり向上による低コスト化に加え最大2倍の長寿命化を実現している。
同社日本法人のビクトレックスジャパン株式会社では、12月1から3日まで幕張メッセで開催の「セミコン・ジャパン展(ブースNo.:8A-401)」に出展しWillbe S&T社のCMPリングを展示紹介する予定。
半導体ウェハ製造におけるCMP(化学機械平坦化)はウェハ表面を研磨し平坦化するための重要工程であり、厳密なプロセス管理、厳しい公差、ウェハ表面の形状と平坦性に関して高い品質が要求されている。近年、エレクトロニクス製品の小型化が急速に進んでいることから、CMP工程に求められる基準がますます高まると共に、CMP工程の重要部品であるリテーナーリングの要求特性は一段と厳しくなっている。
CMPリングはICウェハを装置に固定するためCMP装置の研磨ヘッドに配置される治具であり、通常はSUSとPPSの部品を接合して作られているが、同社のリングは金属製の芯材をVICTREX PEEKで包み込むインサート成形で作製されている。このWillbe S&T社のCMPリングは、現在、韓国国内の大手半導体メーカーに加え日本および米国にも輸出されている。Willbe S&T社製CMPリングの特長は以下の通り:
1. VICTREX PEEKの採用により、CMPリングの寿命を50~100%延長すると共にCMP工程における製造歩留まりの向上とコスト低減に貢献。
2. 従来のリングは表面部(樹脂製)と裏面部(金属製)が動作中の高圧および回転により分離する可能性があり、これはウェハ破損の原因となる。しかしながら、独自のインサート成形によって作製されたWillbe S&T社のリングは、粉塵の侵入や部品の分離を防ぎ、こうした事故の心配が無い。
3. CMP工程で研磨剤として用いられるスラリーはCMPリングに付着しウェハ傷付きの原因となる。しかしながらVICTREX PEEKはPPSに比べスラリーの付着が少ないため、Willbe S&T社のリングはCMP工程におけるウェハ表面の傷付きを抑えられる。
4. Willbe S&T社のCMPリングはリングの側面に穴が設けられており、この穴を通してDI(脱イオン)水を内側に流すことでリテーナーリングの内壁とメンブレンの間のスラリーを除去可能。
5. CMPリング内部にインサートされた金属は再利用が可能なためコスト低減に貢献。
Willbe S&T社のマネージング・ディレクターであるMGキムは、ビクトレックス社の技術サポートに関して「ビクトレックス韓国の素晴らしい技術サポートと迅速な対応のおかげで、これまで直面していた構造上の問題を解決することができ、新たに設計したCMPリテーナーリングを順調に生産することができました。新たな成形材料と加工方法を採用したことでCMPリングの長寿命化とコスト低減化を達成し、エンドユーザからも高い評価を受けています。」とコメントしている。
ビクトレックス韓国のシニア・マーケット・ディベロップメント・マネージャーであるSKシムは「VICTREX PEEKは耐薬品性、耐熱性や電気特性などの優れた特性をバランス良く発揮する高機能性材料であり、厳しい特性が求められるCMPリテーナーリングに最適です。」としており、加えて「ビクトレックス社は最高品質のVICTREX PEEK製品と共に顧客が必要としている技術サポートを提供します。」と話している。
Willbe S&T社について:
1987年に設立されたWillbe S&T社は韓国・華城に本社を置き、最先端の半導体およびLCD製造装置部品の製造と供給に特化した大手メーカーである。Willbe S&T社は独自技術を駆使した製品を台湾、日本および欧州に輸出している。
www.willbesnt.com